NISAを始めるときに多くの人が迷うのが、毎月いくら積み立てるかです。大きな金額が正解とは限りません。無理なく続けられる金額を見つけることが、長く使ううえで重要です。

制度の上限と実際の積立額は分けて考える

つみたて投資枠は年間120万円まで使えるため、月額にすると10万円まで積立設定ができます。ただ、これはあくまで制度上の上限です。すべての人がこの金額を目指す必要はありません。家賃や住宅ローン、保険料、通信費、食費などを払ったあとで、毎月無理なく残る金額の範囲で設定することが重要です。制度の枠に家計を合わせるのではなく、家計の現実に制度を合わせる感覚を持っておくと、始めた後に苦しくなりにくくなります。

初心者が考えやすい3つの水準

月1万円

投資の値動きに慣れることを優先したい人には、月1万円前後は始めやすい水準です。少額であれば、日々の上下に振り回されにくく、「まずは積立を続ける」感覚を身につけやすくなります。NISAは少額からでも始められるので、最初から大きな金額を入れないと意味がないわけではありません。むしろ、途中でやめないことを重視するなら、このくらいの水準から入るほうが現実的な場合もあります。

月3万円

家計にある程度余力があり、預金だけでは将来の不安が残ると感じている人にとっては、月3万円前後は検討しやすい水準です。毎月の負担感と資産形成の実感のバランスが比較的とりやすく、NISAを家計の仕組みとして組み込みやすい金額でもあります。積立に慣れてきたあとで、このあたりの水準に引き上げる人も少なくありません。

月5万円以上

月5万円以上を積み立てる場合は、資金面だけでなく、心理的に続けられるかも確認したいところです。相場が下がったとき、評価額の減り方が大きく見えるため、想像以上に落ち着かなくなる人もいます。数字の上では払えていても、気持ちがついていかないと長期運用は続きません。高い積立額が常に正解とは限らず、無理のない範囲で長く継続できることのほうが重要です。

なぜ金額設定でつまずきやすいのか

投資の情報を見ると、早く大きく積み立てたほうがよいように感じやすくなります。ですが、家計の現実とかけ離れた金額を設定すると、毎月の生活が圧迫されるだけでなく、相場が下がったときに不安が大きくなります。NISAは一度の判断で勝負が決まる制度ではなく、少しずつ続けながら調整できる制度です。この前提を押さえるだけでも、積立額の考え方はかなり整理しやすくなります。

利用者傾向から見えること

日本証券業協会の調査では、新NISAで商品を購入した人の個人年収は「300万円未満」が最も多く、購入資金は「預金」や「給与所得」が中心でした。さらに、つみたて投資枠の平均購入額は45.5万円という結果も出ています。これは、特別に高収入の人だけが使っている制度ではなく、一般的な家計の延長で活用している人が多いことを示しています。自分は資金に余裕がないから無理だと決めつけず、少額からでも始められる制度だと捉えることが大切です。

積立額を決めるときの手順

生活防衛資金を先に残す

NISAは、急な出費に備えるお金を入れる場所ではありません。病気、転職、家電の買い替え、冠婚葬祭など、突然の支出に対応できる現金を別に持っておくことが先です。この部分が不足したまま積立額を増やすと、必要な時に投資商品を売却することになり、長期で続ける前提が崩れやすくなります。

固定費を見直してから決める

積立額は気分や理想ではなく、毎月の家計から逆算して決めたほうが続きます。通信費、保険、使っていないサブスクなどを見直したうえで、毎月いくらなら安定して回せるかを確認する流れが現実的です。投資を始めることそのものより、投資を続けられる家計にすることのほうが先にあります。

少なめで始め、慣れてから増やす

最初から上限近くを狙うより、少なめで始めて半年から1年続けてみて、無理がなければ増額するほうが失敗しにくいです。NISAは、一度に大きく入れることより、年数をかけて積み立てることに意味が出やすい制度です。金額を増やす判断は、始めた後でも遅くありません。

自分にとっての適正額を見つける

NISAで月いくらが正解かは、人によって違います。大事なのは、翌月も同じように積み立てられるか、値下がりしても慌てずに続けられるかという2点です。この条件を満たす金額であれば、それが自分にとっての適正額です。制度の上限より、自分の生活の安定を優先したほうが、結果として長く使いやすいNISAになります。

出典:金融庁「NISA早わかりガイドブック」

出典:日本証券業協会「新NISA開始後の利用動向に関する調査(調査結果概要)」